清友監査法人 SEIYU AUDIT CORP.

COLUMNコラム

CPAのお仕事

はじめまして。清友監査法人の加藤です。12月で入所14年目に突入します。
就職活動時期ということもあり、公認会計士の仕事を自らの体験を交えて振り返ってみたいと思います。

公認会計士は会計および監査のスペシャリストであり、監査法人は公認会計士の独占業務である会計監査を組織的に行う法人とされています。


(JA時代)

試験に合格して業務に従事すると、自分の会計実務に関する知識の無さに愕然とさせられます。

J1(1年目の卵)は現預金科目の担当を命ぜられることが多いのですが、残高を押さえるためにエビデンスをあてます(証憑突合のことをこう言ったりします)。その際に、例えば当座預金残高を押さえるため、当座預金通帳を担当者に依頼すると、担当者は怪訝な表情とともに「照合表ですか?」と聞かれます。
その瞬間におかしなことを言ったことに即座に気付くのですが、慌てて「そうです、そうです」なんて取り繕ったところで後の祭りです。
預金口座=通帳という発想、さすが会計のスペシャリストのなせる業といったところです。このように日常的に実務知識の無さを感じて打ちひしがれます。

そのような実務知識の無さは1年が経過する頃には解消されます。
J2やJ3(2・3年目のヒヨコ)になると経理担当者を凌駕しだします(主観が多分に含まれています)。

「この会計処理は〇〇〇のような趣旨で設定されたようですね。×××のような考え方も公開草案段階ではあったそうですが、△△△が理由で否定されたみたいですね。△△△の考え方は■■■の会計処理とも矛盾しますからね。」

このように、スラスラと説明できれば良いですが、これはまだ先の事です。

しかし、今やネットを検索すれば会計処理方法などは直ぐに分かる世の中、重要なのは根底に流れる考え方や世の中の趨勢などから説明してクライアントに理解してもらえること。
ここにスペシャリストたる価値が見出されます(しっかりと会計学理論を勉強しましょう。基本的に試験科目は実務で非常に役立ちます)。


(CPA-シニア時代)

人にもよりますが、公認会計士は監査業務以外の仕事にも従事します。主にはコンサルティング、事業再生、M&A時の財務DDなど会計を基軸とした周辺業務です。
これらはクライアントの経営意思決定に大きな影響を与えることになるため、当該業務の目的・方向性や依頼する経営者が重視するポイントなどをしつこいぐらい確認します。同じ業務でも目的や方向性が異なれば、検討事項やその深度が異なるからです。
監査業務以外の業務でも監査で培った経験が活かされますので、JA時代は監査業務に邁進しましょう。

監査では主査(監査チームの取りまとめ役)を任されるようになります。この頃からクライアントの偉い方々と話す機会が出てきます。
喫煙所のボス(と勝手に呼んでいた方)が役員だったり、本社ビル1階で体操していたお爺ちゃんが会長だったとのちに知ったりします。
当たり前ですがクライアント先では品行方正に過ごしましょう。

監査現場を1人で任されたりすることや監査上重要とされる論点を担当することが多くなり、徐々に自らの発言に責任感を持つようになります(最初から責任感が必要なのは分かっている)。
当初は与えられた業務に追われているような状況でしたが、自らコントロールするようになると総業務量は増えていたとしても日常業務の切迫感は軽減されます。


(CPA-マネージャー時代)

大きなクライアントの監査現場トップを任されたりすることも多くなり、経営者の考え方などに触れる機会が増えます。この時期に会計士としての深みが出てきたと感じると同時に、会計士としてやっていく自信も醸成されました(独りよがりかもしれませんが…)。

監査法人で勤務することを選んだのであれば、監査テクニックを会得するだけでなく、経営者とのコミュニケーションを経験して欲しいですね。通常であれば、そう簡単にお話を伺うことが出来ない財界人の方の経営哲学に触れることが出来るのですから。

一般的に、この頃に自らの会計士人生を考えることが多くなるようです。会計士だけでなく士業全般にいえることですが、資格を活かす=独立とイメージしやすく、独立開業される会計士の先生がたくさんおられます。
独立開業した場合、税務業務を主とされることが多いようですが、中にはコンサルティングに興味を持つ方も少なくありません。

私も独立を考えましたが、監査を受けるような大きな規模の会社と仕事をすることの面白さは格別なものがあり、監査法人に所属して仕事をする道を選びました。


(パートナー時代)

パートナーになると監査クライアントの業務執行社員となることができます。JA時代からインチャージ(主査)時代まで関与させて頂いていたクライアントの監査報告書にサインをした時には感慨深いものがありました。

業務執行社員は監査の責任を負うことになるため、今まで以上に監査チームスタッフが作成した調書が気になりだします。
監査では意見形成の前に、監査チームとは別の経験値の高い会計士の審査を受けるのですが、受審する側だった時には煩わしさばかり感じました。
しかし、パートナーとなれば審査をする側にもなります。

また、監査の失敗は監査法人の傷となり、ひいては無限連帯責任を負うパートナー(有限責任監査法人もある)の責任となる可能性があるため、(大げさな表現ですが)血眼になって審査をします(だから、煩わしいともいえる)。
結果として、審査の煩わしさよりもその重要性を感じるようになりました。

パートナーは監査法人の経営者でもあるため、CPAスタッフの労務環境やハラスメントにも気を配ります。ハラスメントを取り締まる側であって、決して自らハラスメントを行ってはいけません。
一般事業会社でもいえることですが、特に監査法人は人で成り立っているため、スタッフを大切に扱わない法人は自らの首を絞めることになります。


長々と実体験を交えた公認会計士の仕事を作文しましたが、こう見ると割と悪くない会計士人生だったなと思います(※まだ定年を迎えるような歳ではありません。これからも皆様にお世話になります)。

これも自分の周りに面白い(変な、に近い)仲間がいたことと、その仲間たちが法人を離脱しなかったことが大きかったように思います。
次に入所する新人はどんな変な人たちか、今からワクワク期待しています。