経理担当者や一般の方に役立つ監査の目線・手法
こんにちは、清友監査法人の川島です。今回は経理担当者や一般の方に役立つ監査の目線・手法について紹介します。
経理担当者に知ってほしい「監査の目線」―数字の意味を読む力と開示を意識する重要性
監査というと、“数字のチェック”や“ミスを見つける作業”という印象を持たれる方が多いかもしれません。しかし、監査人は単に帳簿上の誤りを探すだけではなく、決算書の数字が経営の実態を正しく反映しているかどうかも意識します。
例えば、売上が増えた場合、その要因は新規顧客の獲得なのか、単価の上昇なのか、あるいは一時的な取引によるものなのか等、数字そのものだけでなく「なぜこの数字になったのか」という背景やプロセスを考えます。
また、「いつもあるはずの取引がない」、「見たことのない取引が発生している」などの気づきも誤りの発見につながります。
数字の意味や変化の要因を意識することは異常点の発見可能性を高め、内部統制の観点からも非常に有効です。
また、監査人は貸借対照表の残高を意識します。例えば、仮払金や仮受金、預り金等に説明のつかない残高が残っていないか確認します。
一般的に損益計算書の方がわかりやすいため貸借対照表は軽視されがちです。しかし、誤りの兆候は貸借対照表に現れることが多いです。
そのため、貸借対照表の各残高が適切かという目線は非常に重要であり、残高の内容を把握、説明できることが誤りの防止・発見に繋がります。
さらに、監査人は“開示”を意識します。今見ている取引や数字が最終的に決算書でどのように表現されるのか、ということです。特に、新規の取引が発生した場合は開示科目や注記に影響がないかどうかを意識することで、開示書類の作成段階で焦らずに済みます。
例えば、役員や関連会社との取引があれば関連当事者取引注記に影響しますし、決算日後の大きな事象は重要な後発事象注記の要否検討の土俵に乗ってきます。
また、上場会社でセグメント開示がある場合は、取引とセグメントの関連付けを意識することで検討がしやすくなります。
このように、取引と開示をセットで考えることで、開示科目の誤りや注記漏れといったミスに気づきやすくなります。
多忙な日々の作業の中でこのようなことを常に意識することは難しいかもしれませんが、大切なことは日常の些細な変化に気づけるかどうかです。「何かいつもと違う」、「本当にこれでいいのだろうか」このような気づきが適正な決算につながると思います。
日常にも役立つ「監査の目線」──数字を信じる前に、確かめる習慣を
監査の目線や手法は、私たちの身近な生活の中でも役立てることができます。
例えば、家計簿をつけるときに「今月は食費が多いな」と感じたら、監査でいう“分析的手続”の出番です。前月や前年と比較して、どんな要因で増えたのかを探ります。
外食が増えたのか、物価が上がったのか、数字の裏にある理由を分析することで、無駄な支出を発見し、改善策を考えることができます。
また、監査では「リスクが高い部分に注目する」という考え方もあります。これは、“リスク・アプローチ”と呼ばれる限られた時間の中で効率的にミスや不正を防ぐための考え方で、家計にも応用できます。
例えば、毎月の支出のうち金額が大きい住宅関連費用や通信費、保険料などに重点的に目を向けると、支出の見直しが効率的に進みます。
さらに、数字の意味や背景を重視する考え方は、日常の様々な意思決定にも応用できます。
例えば、ネット通販のレビューを鵜呑みにせず、「なぜこの評価になっているのか」「誰が書いているのか」を考えたり、統計情報を見たときに、「このデータはどんな調査から得られたものか」と一歩立ち止まって考えるたりする。このような“確かめる習慣”が、情報があふれる現代を生き抜くうえで大きな力になると思います。
このように、企業や私たち一人ひとりも、日々の数字や情報と向き合うなかで監査の目線を少し取り入れることができます。
みなさまの“健全な決算”に少しでもお役に立てれば幸いです。

